でも、子供の歯ってどうせ抜けるのだから・・・
虫歯は治した方がいいにきまっている。
でも、正直いって、子供の歯ってどうせ抜けるのだから・・・
こういう疑問を持っておられるお母さん、お父さんはいらっしゃいませんか?
確かにそんな感じがしますよね。
ですが、これは間違いです。
どうして間違いなのでしょう?
写真1を見て下さい。これは3~5歳くらい子供の歯列模型です。子供の歯(乳歯)がいっぱい生えていますよね。
写真2は歯肉の中を透明にしたものです。子供の歯(乳歯)の根っこに白いものがありますね。これ何だかご存知ですか。これが大人の歯(永久歯)です。3歳ですでに永久歯がこれだけ出来ているのですね。
さて、こういうときに、虫歯になって、神経まで虫歯が進み、根っこを腫らすとどうなるのでしょうか?
写真3、4を見て下さい。虫歯のある乳歯の根に赤い膨らみがありますよね。これが歯の根が腫れている状態です。根っこに膿を作って、バイ菌が繁殖しますが、ここは永久歯が出来ている真横です。この場所で炎症が続くと、永久歯がやられます。永久歯表面の石灰化が障害されるのです。
すこし言い方がきついのですが、小さい時にこういうふうに根っこを腫らしているお子さんを見ますと、残念ですが、一生、虫歯で苦しむだろうな、ということが経験上推察できます。つまり、生えてきたときにはすでに虫歯になりやすい状態の歯が生えてくるということです。
子供の歯を治した方がよいというもう1つの理由があります。「フッ素は塗ったほうがいいの?」のページで「生えたばかりの永久歯は虫歯になりやすい」と説明させていただきました。この生えてきたばかりの状態のときに、口のなかを不潔な状態にしておくとします。
すると当然、生えてきたばかりの歯に歯垢が溜まります。
その下に酸が溜まります。
するとカルシウムイオンを取り込めません。
マチュレーションが起こりにくくなるわけです。
それどころか、酸によって、さらに歯からカルシウムが抜けていきます。
肉眼ではその変化がわかりませんが、歯の表面にさらに小さなアナボコができる---
簡単に虫歯になる弱い歯になるわけです。
乳歯を治療するというのは、けっして乳歯を治すことが主目的ではないのです。
乳歯を治す目的は、永久歯が生えてきたときにマチュレーションがおこりやすいようなきれいな口腔内の環境にしてあげるということなのです。
ですから、虫歯菌の発生源である虫歯の乳歯は治療する必要があるわけです。
さて、では、もうすでに、多くの虫歯ができてしまったお子さんはどうすればよいのでしょうか?
このようなお子さんを持つお母さんで、次のような経験をしたかたはいらっしゃいませんか?
「私の子は虫歯がいっぱいだった。歯医者に何度も通ってやっとすべて治した。でも、すぐ、虫歯ができてしまった」
実は、過去に虫歯がいっぱいできていたというお子さんの歯は、虫歯になっていない部分も虫歯になりやすい状態になってしまっている場合が多いのです。
じゃあ、こういう場合どうすればよいのでしょう。
まず、お口の中を清潔にする習慣をつけて、定期的に歯科検診を受けさせてください。
残念ですが、たいていすぐに虫歯ができることが多いと思います。
そして(大変だとは思いますが)虫歯が小さいうちにこまめに治療して、歯の根っこまで虫歯が進行しないようにしてください。
そして永久歯が生えたときには乳歯と同じ失敗を繰り返さない---お口の中をきれいな状態に保つ習慣をつけさせてやってください。
口腔内環境さえ改善されていれば新しく生えてくる永久歯は大丈夫です。
ですから永久歯が生える前までに口腔内環境を改善すれば、もう一度きちんとやりなおせるチャンスがあるのです。がんばってください。
「この子はほとんど歯を磨いていないのに虫歯ができない」
「兄弟で同じように育てているのに虫歯のでき方が違う」
「歯を治したあと、きちんと歯を磨いているのに虫歯ができる」
今までの説明で、この虫歯という病気について非常に多様性があるということは理解していただけたのではないかと思います。
簡単な予防法だけで虫歯ができなくなる子供もいれば、本当に丁寧に歯磨きしても虫歯になってしまう子もいます。
虫歯ができたからといって、それが必ずしもお母さんが手入れを怠っていたというわけではないのです。
落ち込む必要はありません。
だって、この時期なら、まだやり直しが利くのですから。