これかの問題をあらかた解決してくれるのがラバーダム(ゴムのマスク)です。
そしてこのラバーダムの機能の中でもっとも重要なのが「口腔環境からの(唾液、歯垢、血液から)隔離する」ということです。
現在、歯科の詰め物で圧倒的に多く使用されているのはコンポジットレジンというプラスチックです。
この詰め物は歯と同じような色で治すことができて、いろいろな形に詰めることができるなど優れた長所のある材料です。
その長所の中でも一番の長所といわれているのが「歯に接着する」ということです。
「歯に接着する」ことによって詰め物が外れにくくなり、詰め物の境目からの虫歯が出来にくくなりました。
歯と接着する歯科用の接着剤が急速に開発・進歩したためです。
この接着剤を使用するに当たって注意することがあります。
(基本的には、一般の接着剤を使用するときの注意と同じです。)
一般にホームセンターなどで売られている接着剤の説明書を見てください。
上手に接着するために必要なことが2つ書いてありますよね。
「接着する面を乾燥させる」 「接着する面を清潔にする」
歯の接着にもこの「乾燥した接着面」と「清潔な接着面」の二つのことが非常に重要となります。
しかし子供の歯の治療する場面をちょっと想像してみてください。
まず「乾燥」ですが、3歳の子供に口をあけさせて奥歯にエアー(圧縮空気)をかけて乾燥させたとします。
どれくらいその状態のままじっとしてくれると思いますか?
たいてい、1秒も我慢できずに口を閉じるか、舌をその部位に持っていって唾液で湿らせてしまうと思います。
次に「清潔な接着面」ですが、このお口の健康の話で何回も書いたことですが、お口の中は細菌でいっぱいです。
たとえば、(唾液腺から出たばかりの唾液は無菌状態ですが、お口の中に貯まっている)唾液は1ml中に1億~100億の細菌がいます。とてもきれいといえるようなものではありません。
また歯面には歯垢という形でたくさんの細菌が付着しています。
これらのことから、良好な接着を得ようとすると、ラバーダムを使って治療しようとする歯をお口の環境から隔離する必要があるわけです。
でも、この話、実は子供にだけ当てはまることではありません。
そうです。大人でも同じです。
とくにレジン充填(プラスチックの詰め物)や根管治療(歯の根の治療)をする場合はできるなら使用したほうがいいと思います。
質問: 子供が治療するときに着けるゴムのマスク、あれは必要なのですか?
小児歯科の治療で、ゴムのマスク(ラバーダムといいます)は絶対必要です。
ラバーダムなしでの小児歯科の治療は考えられないといっていいほどです。
一般に子供の歯科治療が敬遠されてきた原因のいくつかに
次のようなことがいわれています。
* 子供がじっとしていないために、歯を削るときに不意に動いて頬や舌や歯肉を傷つけてしまう可能性がある。
* 突然動くので、誤ってものを飲ませてしまいそうだ。
* 大人より唾液が多くて歯に詰め物がしにくい。
* 歯につける薬が苦くて大騒ぎをする。
* 絶えずしゃべって口をじっとあけてくれない。
* 歯茎付近の虫歯を削ると穴に唾液や血液が入ってくる。